後生車とは、柱に車輪をはめ込んだもので、車輪を回すことで、死者の冥福を祈ったり、来世の安寧を願ったりすることができます。

雲祥寺では、廻してみて、スッと止まれば極楽浄土へ、少し逆回転してしまうと地獄行きと伝わっています。

そのお寺の裏は小高い墓地になつてゐて、山吹かなにかの生垣に沿うてたくさんの卒塔婆が林のやうに立つてゐた。卒塔婆には、満月ほどの大きさで車のやうな黒い鐵の輪のついているのがあつて、その輪をからから廻して、やがて、そのまま止つてじつと動かないならその廻した人は極楽へ行き、一旦とまりさうになつてから、又からんと逆に廻れば地獄へ落ちる、とたけは言つた。たけが廻すと、いい音をたててひとしきり廻って、かならずひつそりと止るのだけれど、私が廻すと後戻りすることがたまたまあるのだ。秋のころと記憶するが、私がひとりでお寺へ行つてその金輪のどれを廻して見ても皆言ひ合せたやうにからんからんと逆廻りした日があつたのである。私は破れかけるかんしやくだまを抑えつつ何十回となく執拗に回しつづけた。日が暮れかけて来たので、私は絶望してその墓地から立ち去った。

‐太宰治『思い出』

ずっと屋外にありましたが、老朽化が進んできましたので、中へ移動しました。
本堂に入って左、観音堂の横の階段を下りたところに設置しています。
(蛇腹の引き戸がついていますが自由に開閉していただいて大丈夫です)

太宰治が「何十回となく執拗に廻しつづけた」という実際の後生車を、皆さんも廻してみませんか。

また、雲祥寺入口の横に太宰治記念碑があり、そちらにも後生車があります。
碑文には【汝を愛し、汝を憎む 太宰治】とあり、太宰治直筆の『金木文化』に贈る言葉が彫られています。